容量、価格、味わい、製法を刷新

11 年目の初リニューアルに挑む


  「キリンウイスキー 富士山麓」は昨年大きく躍進した。そして今年、発売以来初めての大がかりなリニューアルを行った。モルトウイスキーもグレーンウイスキーも一つの蒸溜所で造る独自の理念で展開するキリンの新たなウイスキー戦略とは。  

キリンウイスキー 富士山麓 樽熟原酒50°

 

 

キリンビール株式会社

 
マーケティング部 洋酒カテゴリー戦略担当
洋酒グループ ブランドリーダー
吉田雅彦さん

ウイスキーへの関心が高いユーザー

 「2015 年、富士山麓は対前年比約140%と拡大しました」とマーケティング部 洋酒カテゴリー戦略担当 洋酒グループブランドリーダーの吉田雅彦主務。市場全体の伸びと比べて20 ポイント程度高い伸び率だ。「料飲店でのメニュー化を進め配荷率がアップし、量販店ではブランド横断でのディスカバウイスキーキャンペーンを展開しました。富士山麓は価格 以上の品質が大きな魅力。エコノミー・スタンダードクラスのウイスキーを一通り飲んでここにたどり着いたというユーザーが多い。ウイスキーやお酒に対する知識欲のある人が増 えてきたことも昨年の好調につながっている」とみる。

多彩な原酒をブレンド

 その好調下、2016 年は価格帯も変える大幅リニューアルを行った。「ウイスキーユーザーの中で富士山麓の認知度は4割程度。キリンビールがウイスキーでもこだわったものづくりをしていることをもっと広く知ってもらいたいと発売11年目にして初のリニューアルを行いました」(同)。容量を600ml から国際標準の700ml に変え、価格も1000 円程度から1500 円前後にアップすることを想定。品質面ではブレンド内容を刷新してアップグレードし、ろ過工程も新規採用した。
 「1500 円クラスにしたことで、これまでは使用できなかった、より多彩な原酒をブレンドできることになり、商品名も以前の〝樽熟50°〟から〝樽熟原酒50°〟に変更。富士御殿場蒸溜所の理想とする〝澄んだ味わいの中に広がる甘い樽熟香〟がより豊かに香るようになりました」という。

うまみ成分をより多く残す

 もうひとつのポイントが、これまで主に高価格帯や限定ウイスキーを中心に使われていた原酒のうまみを残すノンチルフィルタード製法の採用。ウイスキーのうまみ成分の量は加水後の製品アルコール度数や温度に関係する。アルコール度46 度前後を超えると溶け込むうまみ量が急増する。富士山麓が50 度にこだわるのもそのためだ。「一方、うまみ成分は白濁などの原因にもなります。加水によってアルコール度が低くなると白濁しやすくなる。このため通常は0℃かそれ以下で冷却ろ過を行います。ただ温度が下がるとうまみ成分がより多く析出されるため、失われる量も増えます。うまみをより多く残すため、ろ過を常温で行いながら白濁さない技術とプロセスを確立しました」と吉田リーダー。その結果、「富士山麓 樽熟原酒50°」では、味わいの厚みが増し、いままでより樽熟香をはっきりと感じられるようになったという。

富士山麓に全力投球

 発売は3 月22 日。「良さを分かってもらうことが一番なので、富士山麓に接する機会を多くしたい」という。テイスティング、フードペアリングができるコンセプトショップや体験型セミナーも展開予定。販促は「富士山麓」に特化して注力する。
 ウイスキー業界は、商品改廃や値上げなど大きな動きを見せている。ウイスキーブームの中で静観していたキリンのウイスキーがいよいよ新たな展開を見せる。綜合飲料企業を掲げるキリンビールにとってウイスキーはしっかり育てたいジャンル。「富士山麓」11 年目のリニューアルは、同社の新ウイスキー戦略の第一歩となる。